──誠実さの中に感じる、さみしさ──
「Honesty」を聴くと、心の奥で静かに疼くような感覚がある。
派手な装飾もなく、ただピアノの音と声だけが寄り添ってくる。そこに込められているのは、愛や優しさを求めるよりも、もっと根源的な願い――“誠実であってほしい”という叫びだ。
冒頭でジョエルは歌う。
If you search for tenderness, it isn’t hard to find
You can have the love you need to live
優しさや愛はすぐに見つかる。口先だけなら誰でも言える。
でも続く一節で、一気に突き落とされる。
But if you look for truthfulness, you might just as well be blind
誠実さを探しても、ほとんど見つからない。愛が溢れているように見える世界で、誠実だけが欠けている。だからこそ、その不在がひどくさみしい。
誠実というさみしさ
サビで繰り返されるフレーズが胸を締めつける。
Honesty is such a lonely word
Everyone is so untrue
直訳すれば“孤独”だが、ここで響くのは「さみしい」という感覚だ。
「誠実であること」が人と人の間にほとんど存在しないさみしさ。
信じたいのに信じられない、寄り添いたいのに届かない――そんな日常の断片を、この歌は静かに照らす。
あなたに必要なもの
続く一節で、彼はさらに語りかける。
Honesty is hardly ever heard
And mostly what I need from you
「誠実さはめったに耳にできない。けれど、今自分に必要なのはそれだけだ。」
この“you”は特定の誰かであると同時に、聴く私たちの心にも突き刺さる。
誰にでも、“ただ誠実でいてほしい”と願った夜があるはずだ。愛の言葉や慰めよりも、まっすぐな誠実さを求めていた時間。あのさみしさを思い出させる。
静かに寄り添う歌
「Honesty」の魅力は、その静けさにある。声は叫ばない。ただ切実に響き続ける。ピアノの音は心臓の鼓動のように淡々と刻まれ、誠実さを求める声が聴く者に重なっていく。
聴き終えたあとに残るのは、大きなカタルシスではない。心にぽつんと広がる“さみしさ”だ。そしてそのさみしさは、なぜか聴き手に温度を与える。
変わらない願い
時々、この曲を無性に聴きたくなること、歌いたくなることがある。
この曲が時を超えて愛され続ける理由は、誠実さがいつも不足しているからだ。社会が変わり、人のつながり方が変わっても、誠実でいてほしいという願いは変わらない。
その願いが叶わないとき、人は深くさみしい。
ビリー・ジョエルは、その感覚をたったひとつの言葉で歌い切った。


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